機械学習ベンダーのエンジニア日記

ベンダーエンジニアのキャリアに関する日記。元データベースベンダーエンジニア、現機械学習ベンダーエンジニア

ベンダーならなんでもいいわけじゃない

エンジニアとしてキャリアを積む際ベンダーならどんな会社でもいいかというともちろんそんなことはない。

 

これまでベンダー内のエンジニアごとに得られるスキルの違いなどを書いてきたが、そもそもベンダーにも種類がある。

 

技術レイヤーとしては、インフラ、ミドルウェア、アプリケーションという大きく三つがある。インフラであれば、ストレージやCPU、ネットワークスイッチ、それらを組み合わせたサーバベンダーなどが含まれる。ミドルウェアであれば、データベース、WebApサーバ、BIベンダーなどが含まれる。アプリケーションは会計や人事など別名でパッケージベンダーなどとも呼ばれる。

 

規模によっても違いがある。単体の製品技術だけを扱うのが専業ベンダー、複数扱うベンダーはメガベンダーと呼ばれる。イメージとしては、専門商社と総合商社を想像していただきたい。メガベンダーでは製品を複数扱っているが、往往にして一つの製品技術を担当することになる。もちろん、部署移動をして違う製品をあつかうことはしやすいがベンダーにおける転職は部署移動のようなものというくらい特定の方向には簡単にできるので、全レイヤーを扱ってスキルを幅広くもつというモチベーションだけで、メガベンダーにくる価値はない。それどころか仕事が細分化されているケースが多いため、規模の小さい専業ベンダーよりも特化型になりやすい。メガベンダーでのキャリアとして圧倒的に大きいのは案件規模とブランド力となる。

 

エンジニアとして働きたい新卒にお勧めはどこかと言われたら、迷わずミドルウェアを扱う大手ベンダーと答える。まずインフラベンダーは今の主流からはだいぶ厳しい。ベンダーは転職も多く、優秀な人は波に乗っているベンダーにいる。正直インフラベンダーの栄光はだいぶ過去に追いやられてしまった。cpuやネットワークの一部の企業は確かにまだまだ時代の波に乗っているが、ここまでインフラの一技術を専門的に突き詰めていくと、次のキャリアが想像しづらい。例えばcpuのコア技術はそうそうソフトウェア領域では必要にならない(今のクラウド時代にcpuは仮想化され、もはや何が動いているかを細かく気にする人も少ない)。結局cpu業界から出づらい上にcpu業界で想像できる企業数も少ない。cpuの研究を突き詰めたいというキャリアが新卒のタイミングで固く決まっている場合には悪くはないが、正直そんな新卒にはなかなかお目にかかることもないので、やはり全体的な意見としてはお勧めできない。

 

アプリケーションベンダーはそういった意味だとクラウド全盛期で波に乗っているのだが、業務知識を高いレベルで必要とするため、新卒でエンジニアとして行くにはもったいない。業務スキルがつきやすいので、エンジニアリングスキルよりもプロジェクトマネージャーよりでITに関わっていきたい人や、業務寄りのソリューションが好きな人は悪くない。ただ、お客からすると業務の話をディスカッションするのはもちろんのところ、ベンダーという肩書きからIT領域も詳しくて当たり前と思われることから始めのうちはキャッチアップが大変となる。往々にして、IT領域は中途半端に成りがちで、アプリケーションベンダーからのスタートだと、その後のキャリアもアプリケーションベンダーとなる。エンジニア業務といっても、国内アプリケーションベンダー以外だと、日本語対応やUIバグへの対応がメインとなるので、プログラミングやアーキテクチャの把握など一般的にITエンジニアに想像されるスキルはまず伸びない。中途で色々と基礎ITスキルが整ってから行く分には給与レンジも高く、業務知識というほかのレイヤーでは付きづらいスキルも付くので、申し分ない。

 

新卒として今の時代に一番お勧めしたいのはミドルウェアベンダーであり、可能であればメガベンダーがよい(ミドルウェアベンダーで専業でそれなりに大きい企業はこの時代には存在が幻に近く、専業となるとスタートアップになりやすく、ほかの業界でも新卒にスタートアップを勧められることは私の個人的な考えではあまりないように思う)。スタートアップは新人の権限が多いなど言うが、ベンダーは概ね新人でもそれなりに権限が多いので、わざわざスタートアップのその魅力だけで選ぶ必要はない。それどころか、新卒でも入れるスタートアップが担当できる顧客規模やパートナーの数がそこまで多いことはまずないので、トータルの権限ではメガベンダーには到底及ばない。

またミドルウェアというレイヤーがいい点に関しては、まさに中心にいる企業が多いことと、ITスキルに集中して最初の基礎を築くことができることの二点だ。この二つを満たしていればITエンジニアのファーストキャリアとして自ずとよい職場環境というのは出来上がっていく。ミドルウェアベンダーで気をつけていただきたいのは、業界4位以下は選ばないこと。ミドルウェアと言ってもすべての企業が波に乗っていて、有名な企業のすべてが当たっていることはない。すごくいいと評判の企業も中の人は知っている外れ製品みたいなのは必ずある。業界シェアと経営戦略でどれくらいの比重を置いているかをみておくことをお勧めする。

 

IT業界の流れは早いもので、私のここまで書き殴った大まかな考えは、今は共有した多くの人から共感を得られているが、きっと数年後には時代遅れになっているだろう。まさに10年前ならインフラレイヤー一択だったと思う。私自身多いに悩み、悩み迷った人も多くみてきた経験を少しでも共有し、これからの人にとってよりよい選択が行われる手助けになれたらと。